無伴奏混声合唱のための「秋の瞳」


無伴奏混声合唱のための「秋の瞳」(全5曲)

  1. 序 ―友が無くては
  2. 心よ(Ⅰ)
  3. おほぞらのこころ
  4. こころの船出
  5. 心よ(Ⅱ)

作詩:八木重吉

作曲:SEIGI

編成:無伴奏混声4部合唱(div.あり, 省略可)

演奏時間:2分15秒/2分20秒/2分45秒/2分25秒/2分(約11分45秒)

作曲年:2020年4月~2023年8月

 

第1曲「序 ―友が無くては」を軸に、約3年の月日を経て編まれた「心」をテーマにした曲集。全5曲。
div.がほぼないので、少人数アンサンブルでもお楽しみいただけます。
また1曲2分~3分以内に収まるので、合唱コンクールやアンサンブルコンテスト、合唱祭などでの選曲に最適。

 

初演データ
●WEB初演「序 ―友が無くては」

2020年6月26日 *YouTubeにて動画公開

リモート合唱:バーチャルイクトゥス(合唱団イクトゥス有志)

 

●一部初演「心よ(Ⅰ)」「心よ(Ⅱ)」

2024年2月18日 スターツおおたかの森ホール

「第28回ア・カペラアンサンブル交歓会」にて

合唱:合唱団あづまや

指揮:宇田川吾郎

 

●全曲初演 NEW

2024年10月14日 大田区民プラザ 大ホール

「言の葉とめぐる旅 ~アカペラ合唱祭~」にて

合唱:合唱団あづまや

指揮:宇田川吾郎


Score

品番:SSP-G0033

出版:SSP出版

販売形態:製本版(中綴じ)

ご注文から製本工程を経て、製本会社の発送による商品の到着まで、通常配送の場合およそ1~2週間程度かかります。なるべくお時間に余裕をもってご注文くださいますようお願い申し上げます。

*第1曲「序 ―友が無くては」のみ収録

品番:SSP-G0901

出版:SSP出版

販売形態:製本版(SEIGIア・カペラコーラスアルバム ベストセレクション Vol.1 [混声編])


YouTube



作曲者からのメッセージ

 2020年、新型コロナウイルス感染症対策で皆と隣り合って合唱したくてもできないご時世でした。連日の暗いニュースに不安を覚え憔悴しきってる方々へ、少しでも自分の音楽をお届けできればと思い、1曲目にあたる「序 ―友が無くては」を書きました。八木重吉の詩集「秋の瞳」の序文に掲載されているこの詩を読んで、私は一目惚れしたのですが、実を言うとこの詩と出会って作曲に着手したのはさらに2年ほど前。冒頭の数小節ほど書き放置してそのままお蔵入りに…。いつかまた曲を付けようと何度も思いつつも、今の今までなかなか書くきっかけがありませんでした。未曾有の事態に世界が混沌し、希望が見えにくい日々が続いている最中。またこの詩と対峙してじっくり読んでみると、今この時こそ、この詩が必要なのではないかと感じたのです。そして「この詩に曲を付けたい!」という欲求が溢れ出てきて、久々に筆を走らせることになりました。

 まず完成した「序 ―友が無くては」のPDFデータのピース譜を同年4月からネット上で無償公開し、どなたでもフリーダウンロードできるようにしました。その際、長年お世話になっている合唱団イクトゥスの有志の皆様が同年6月にリモート初演(多重録音)してくださったのが嬉しかったですね。コロナ禍で全体での合唱練習ができなかった間、団員有志が自宅で各々練習、録音、それらをまとめて音源を編集してくださったそうです。演奏を拝聴して、むしろ曲を書いた自分が勇気づけられました。演奏は私のYouTubeチャンネルで視聴することができますのでぜひご覧になってみてください。

 

 次第に、この「序 ―友が無くては」を軸に「心」をテーマにした曲集を編みたいと思い始め、詩集「秋の瞳」から残り4篇の詩を選び約3年の月日をかけて作曲、同様に無償公開しました。ハートフルな曲、しんみりする曲、ゆったりとした曲、スピード感のある曲など様々です。全体で12分にも満たない小品集ですけれど、多くの皆様に愛唱されることを願ってやみません。また、div.もほぼないので少人数でのアンサンブルでもお楽しみいただけると思います。この曲集に副題を付けるとしたら「五つの心の旅」でしょうか。たくさんの表情を魅せてくれる心。五つの心の旅があなたを待っています。

 

2023年9月

SEIGI

楽曲解説

  • 1. 序 ―友が無くては
     2020年4月に作曲。まずピースとして単独で先に発表。この曲がなければ曲集も生まれることはなかったでしょう。後に女声合唱版にもリアレンジされていますが、歌曲版(独唱)では新たにピアノパートが付されています。演奏のポイントとしては、「耐へられぬのです」のespr.をどう歌うか。なぜここにespr.を付けたかを考えてみましょう。後半では和声が変わっている点にも注目して心境の変化を味わってください。10、12小節でAltoが「うた、うたを」と重ねる箇所も、「歌、歌おう」に聴こえるように構成しています。ラストの幾分テンポを落とすMeno mossoは本当に心から願って歌っていただきたいフレーズです。
  • 2. 心よ(Ⅰ)
     2023年4月に作曲。冒頭から p でSop.だけが「ほのかにも」と歌いだしますが、その他のパートはヴォカリーズ「U」のみです。まだ何にも染まっていない純粋な音色を作り出してください。この曲の前半は、色彩豊かに、まるでグラデーションのように調性が定まらず変化を遂げていきます。今自分がどういった音色を作り出さなければならないのかを見失わないように気をつけましょう。ここらは適当に歌おうとすると音楽がすぐに崩壊しますので、正しいピッチを会得して何度も練習してください。13小節「ながれゆくものよ」の3連符は若干rubatoで演奏しても良いでしょう。15小節「さあ」のdecisoは決然と。18小節「やくだたぬものに」で f 、前半の盛り上がりに入ります。22小節~30小節まで全パート「はてしなく」と歌い続けますが、乱れやすいので特に注意したほうが良さそうです。遠くへ、遠くへ向かうようにdim.してください。31小節からは後半、今まで定まらなかった調性がニ長調へ落ち着き、ここから所謂SeigiSoundが始まりますので存分に味わってください。39小節はpoco f でより一層輝きを増して。43小節の減七の和音はしっかり決めましょう。47小節からのallargandoはじわじわと。「かけりゆけよ」という言葉のニュアンスを大切に。 
  • 3. おほぞらのこころ
     2023年6~7月にかけて作曲。冒頭の4小節の「lun」は軽やかに。これは心の動きです。「ルーン」ではなく「ルンー」と「ン(n)」を伸ばして歌ってください。前半はテンポが速いので、リズムが転ばないように歌う際は注意しましょう。5小節「わたしよ」は自分に言い聞かせるように。まるで切迫感があるような f で。7~9小節の三善アクセント、デクレッシェンド、クレッシェンドは多少大げさにやっても問題ないでしょう。10小節「はくちょうとなり」はアクセントが付いた ff です。緊張感をもって。12小節にあるpocoフェルマータは、ほどよい間を作ってください。※34小節も同じように。13小節からの「らんらんと」はmisterioso=神秘的に。全音階の不思議な響きを味わって。この曲の中で一番難しい箇所なのでしっかり練習をしましょう。正しいピッチで、美しく。31小節、35小節の「すきとおって」は、2度目はより透き通るようなイメージをもって p で歌いましょう。39小節からはテンポが幾分ゆっくりと進みます。雄大に。横の流れと縦の和声を感じて。メロディーがはっきりしているので、どうぞ伸びやかに歌ってください。57小節のMeno mossopp は内面に向かってつぶやくような「わたしよ」であってほしいなと思います。不思議でやや複雑な和音で終止しますが、これは己の心が定まっていないことを示唆しています。願望と不安が入り混じった曲とも言えますね。短い時間の中で紡がれるドラマを皆さんで作ってください。
  • 4. こころの船出
     2023年7月~8月にかけて作曲。作曲順としては一番最後に書きました。曲の前半はただただ美しく。テンポもゆっくりなので、心の旅に自然と寄り添って。冒頭の「しずか」は本当に静かな p で。ささやくぐらいに。4小節目、Bassの入りのハミングは比較的高い音域(D♭)からなので注意。14小節目、「ただ」のテヌート、フェルマータはほどよく。15小節目からテンポが速くなりますが、決して慌てないように。con moto=動きをもって。特に15~16小節目の「ただ」の連呼はアクセントにも注意。17~20小節目はAltoが主旋律。埋もれないように。24小節目までクレッシェンド、デクレッシェンドの波がありますので、表現にメリハリを付けて。25小節目は後半の盛り上がり。まるで心が勇ましく船出するような f で。26、28小節に後追いで出てくる男声の「はてしなく」「ふなでする」の付点8分音符の扱いは重要。船が荒波に揺れるような動きがほしい。29小節目、「わがみを」はSop.からBassまで一つの線になるように繋げて。31小節目、riten.で幾分テンポを落として。「おおう」のデュナーミクにも注意。33小節目、Altoだけ違う動きをするので「しんじゅ」の付点音符は特にはっきりと。36小節目、冒頭の静けさを再現して。テンポはさらにゆっくりと。ここでは歌詞はなくハミングですが、響きを得るために若干口を開けて歌っても良いでしょう。最後の pp はデリケートに消えゆくように。
  • 5. 心よ(Ⅱ)
     2022年11月に作曲。とてもシンプルな曲且つ2分という短い小品ですから、どのように構築し、味付けしていくかを考えなければなりません。シンプルな曲ほど歌ってみると意外と難しいものです。1小節目は敢えてアウフタクト(不完全小節)にはしませんでした。ですから1拍目はカウントしてください。テンポも69と86が交互に出てきます。譜面にも書きましたが、それぞれ「心」を送り出す気持ちと、やや躊躇う気持ちが葛藤したイメージで。心の重さと軽やかさを音楽に託しました。13小節「やっぱり」から p で幾分弱くなりますが、温かさをもって大切に。19小節「では」の三善アクセントはやや強調して。34小節のMeno mossoは自分の、相手の心に想いを馳せて。最後の「A」は絶叫ではなく「ああ」(感嘆詞)となるよう柔和な f で表現して曲を閉じましょう。


    ★作曲する際に変更した点
    「序 ―友が無くては」
    この詩は無題の為、作曲する際、題を「序」とし「友が無くては」の一節を副題としました。
    また、詩(し)を「うた」と読み替える事ができる為、本楽曲では「うた」として曲を付けております。

    「心よ(Ⅰ)」「心よ(Ⅱ)」
    本来の詩の題は「心よ」です。2篇とも題名が同じですが全く別々の詩である為、作曲する際に便宜上Ⅰ・Ⅱと付けました。

解説 SEIGI

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