女声合唱とピアノのための組曲「想伝」


女声合唱とピアノのための組曲「想伝」(全5楽章) 

  1. 真っ暗の空
  2. 二つの想い
  3. ガーデン
  4. 鼓動
  5. 想伝 ― 二人の糸 ―

作詩:美鶴

作曲:SEIGI

編成:女声3部合唱+ピアノ(div.あり)

演奏時間:4分30秒/4分/5分40秒/2分10秒/3分50秒(約20分10秒)

作曲年:2008年10月~2010年4月

 

拙作初の女声合唱組曲。

タイトルは「そうでん」と読み、作詩者の考えた造語であり、テーマはその名の通り「想いを伝えること」です。

 

初演データ
●一部初演「真っ暗の空」「鼓動」

2011年6月3日 千葉市美浜文化ホール 音楽ホール

「ラ・ポッシュ Early Summer Concert」にて

演奏:女声ア・カペラコーラスグループ「ラ・ポッシュ」

ピアノ:平田秀子

※作曲者立ち会いのもと、初演されました。

 

●一部初演「想伝 ― 二人の糸 ―」

2024年3月20日 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール

「第2回女声合唱フェスティバル」にて

演奏:ハートウォーミングコーラス

指揮:鈴木智士

ピアノ:木間尚子

※作曲者立ち会いのもと、初演されました。

 

●組曲初演 NEW

2024年9月8日 高津市民館 大ホール

「合同演奏会」にて

演奏:ハートウォーミングコーラス

指揮:鈴木智士

ピアノ:木間尚子

※作曲者立ち会いのもと、初演されました。


Score

品番:SSP-F1001

出版:SSP出版

販売形態:製本版(無線綴じ) 

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作曲者からのメッセージ

―――自分の胸に秘めた想いを伝えるためにはどうしたら良いのだろう…。

そんなことを一度や二度、ふと考えたご経験は皆さんもあるはず。伝える手段はどうであれ、喜びや哀しみ、難しさ、もどかしさは計り知れない。組曲に収められた個々の物語は、私たちが感じるそんな感情をドラマチックに、そして繊細に描かれています。作詩者の美鶴(びかく)氏とは、2007年にとあるコミュニティサイトで知り合い、後に混声合唱組曲「命のパルス」を共作したご縁もあり、他にも小学生のためのクラス合唱曲(「時計のリズム」「金魚の昼寝」「小さなメルヘン」)を制作をしました。

 

この組曲を制作するきっかけとなったのは、作曲家兼指揮者としてご活躍中の松下 耕氏が率いる国立音楽大学女声合唱団ANGELICAが、創立10周年を記念して新作の女声合唱組曲を公募していたのを知ったからでした。それまで女声合唱の作品を書いていなかったので、ふと「この機会に書いてみよう」と思い立ち、美鶴氏にご協力をお願いして数編の詩を送っていただきました。しかし、作曲を開始したのが10月と遅く、公募の締切日もとうに過ぎてしまっていたので、応募するのは断念せざるを得ませんでした。2008年10月頃に第1楽章「真っ暗の空」の作曲に着手し、それからのんびりと1曲ずつ作曲していたら(途中のスランプ期間も含め)、終曲の「想伝 -二人の糸-」まで約1年半もかかってしまった!月日の流れる早さの怖さを思い知りました…。

 

組曲のタイトルである「想伝(そうでん)」とは、まさしく「想いを伝えること」という意味の造語です。この造語は美鶴氏によるもので、私はこのタイトルをとても気に入っています。また、彼の描く詩の世界はスーッと心の中に染み渡ってくる。そう、何か惹きつける見えない力があると思います。皆さんにもこの美鶴氏の詩の世界を是非とも堪能してほしいですね。

 

最後に、こんなに素晴らしい詩を私に提供してくださった美鶴氏に心からお礼を申し上げます。

2011年10月

SEIGI

楽曲解説

<構成ノート>

  1. 二人の男女(主人公)がいる。恋に悩む日々を過ごしている。この時点では、お互いを意識している段階で、まだ恋愛関係には至っていない。
  2. いずれ恋愛関係に発展。付き合うようになる。
  3. そして結婚し、新婚生活を営むようになる。(心の庭・夢の庭は、お互いの事を指していると仮定する)
  4. やがて子供を授かる。新しい子供の命の鼓動と、それを喜ぶ親となった視点の男女の鼓動。それゆえテンポは速めに設定する。
  5. お互い歳を重ねてもいつまでも幸せであるように願っている。もしくは、今までの回想と捉える。完結へ。

  ※なお、この一連の男女の恋愛ストーリーは、私が作曲する際に構成・構想した妄想!?物語であり、美鶴氏が本来考えていた(意図した)ものではない事を、ここに明記しておきたい。

 

 

  • 1. 真っ暗の空
    2008年10月~12月にかけて作曲。冒頭はしずかに。心の中の内面的な世界を表現して。私は、静寂な夜にひっそりと窓辺に一人佇んでいる場面をイメージして作曲した。美鶴氏曰く、この詩は「心を空の色で比喩表現したもの」だそうだ。
    ・月や星の明かりも届かない闇
    ・この闇を振り払うだけの力を持つ気持ち
    ・自身の笑顔を引き出してくれるような、周囲の自身に対する想い
    また、「真っ暗」というものをさらに少し重く表現するために、あえて「真っ暗な空」でなく、「真っ暗の空」というタイトルにしたとの事。作曲者としては、前奏と後奏のピアノが同じモティーフである事に注目してほしい!これは主人公の気持ちの変化、モヤモヤしていた心が晴れて浄化された事を示唆している。
  • 2. 二つの想い
    2009年1月~2月にかけて作曲。私がスランプに陥っていたのは、たしかこの時だったと思う。美鶴氏曰く、彼自身が今は亡き尾崎 豊の楽曲の中でも一番好きだという「ふたつの心」を、自分なりの感性でもってこの世界を表現されたそうです。とても良い曲なので皆さんも一度聴いてみてほしい。テンポの変わり目=場面転換として考え、しっかりと曲作りしていただきたいと思う。特にラスト(58小節以降、練習番号【F】)は暖かな春の情景を感じて。ピアノは、まるで桜の花びらが舞い落ちるかのように。最初に旋律が浮かんだのがこの部分で、サビと言っても過言ではない。
  • 3. ガーデン
    2009年5月~8月にかけて作曲。この「ガーデン」という言葉をそのまま訳せば「庭園」となるが、私は結婚式(式会場)が頭に思い浮かんだ。詩の世界にも出てくる「天使」が愛のキューピットとして登場する。まるで、前曲の男女二人を祝福するかのごとく空から舞い降りてくるわけだ。そして、この天使の役割を果たすのがソロである。ソロは一人でも複数でも良いし、また、パートは問わないので(97~110小節、練習番号【I】は音域が高いので、Sop.の方がソロを務めてあげてほしい)、是非自信のある方はチャレンジしていただきたいと思う。譜面にもあるようにmisterioso=神秘的に演奏してほしい。この旋律が、曲全体を支配していることを念頭においてもらいたい。
  • 4. 鼓動
    2009年9月~10月にかけて作曲。詩を読んでいると、ラヴェル作曲の「ボレロ」が頭に流れだした。なので、ボレロのリズムを取り入れようと思ったのだが、どうも上手くいかず早々に断念。その後、何度も出てくる「トクッ」という言葉のリズム(鼓動)が私を突き動かし、作曲もスムーズに進んだことを覚えている。この曲は、基本的にリズムが軸になるので、音取りする前にまずリズム練習を十分にすること。またテンポが速いので、言葉の処理には気をつけることが大切。乱暴に歌っては元も子もない。元気よく歌うことで、歌い手・聴き手が共にその元気を共有できたら素晴らしいと思う。美鶴氏曰く、最初は「産まれた時から奏でるメロディ」というタイトルだったとのこと。
  • 5. 想伝 ― 二人の糸 ―
    2009年11月~2010年4月にかけて作曲。8分の12拍子という、比較的ゆったりとしていながらも、大きなフレーズの流れを感じる事のできる曲である。それこそ「おおらかに」歌っていただきたい。途中、それまでの明るさから一変、一時的にE-mollに転調するのだが、接続部は作らず敢えて断ち切るように書いている。このポイントを上手く利用したうえで、場面転換に生かしてほしい。「表情を変えて」とあるのは、そういう意味も含んでいるからだ。それからまた徐々に明るさを取り戻して、最初のH-durへと回帰する。そして、優しく温かい気持ちでこの組曲を締めくくっていただければ幸いである。

解説 SEIGI

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